第61回 午前 問4
理学療法評価学
次の文により、4、5の問いに答えよ。70歳の男性。右利き。右脳出血による左片麻痺。発症後2週。運動麻痺は左上下肢ともBrunnstrom法ステージⅢ、感覚障害は中等度。座位では、右上下肢で座面や床面を押し、図のような姿勢となる。転倒の危険があり、理学療法士が正中位に修正を試みるが抵抗する。平行棒内立位でも同様に右上下肢で押すため身体は左に傾斜し、立位保持要介助である。
理学療法を行う上で最も優先する検査はどれか。
座位の姿勢の図:
- 患者は台の上に座り、右上肢を伸ばして手で座面を押している
- 体幹は左(麻痺側)へ傾き、左側に座った理学療法士が肩を支えている
- 1SCP
- 2SLTA
- 3TMT
- 4WAIS-Ⅳ
- 5WCST
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✓ これが正解1SCP
解説
押す・傾く・修正に抵抗する症状なのでSCPで評価します。
この患者は、座位でも立位でも非麻痺側の右上下肢で座面や床を押し、身体が麻痺側の左へ傾いています。理学療法士が正中へ戻そうとすると抵抗します。これはpusher現象と呼ばれる症状の典型で、右半球の損傷で起こりやすく、転倒の危険が大きいことが特徴です。理学療法を組み立てるには、まずこの症状がどの程度あるかを把握することが最優先になります。
SCP(Scale for Contraversive Pushing)は、自然な姿勢での傾き、非麻痺側の上下肢で押す動作、他動的に正中へ戻そうとしたときの抵抗の3つを、座位と立位で採点する評価法です。症例文の情報がそのまま評価項目に対応しています。ほかの肢は、失語、注意、知能、遂行機能を調べる検査で、この場面で問題になっている姿勢の傾きと押す動作を直接は測れません。
よって最も優先する検査はSCPです。押す、傾く、修正に抵抗するの3つがそろったらSCP、と覚えておきましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2SLTA:SLTA(標準失語症検査)は、聞く・話す・読む・書くなどの言語機能を調べる検査です。症例文には言語の問題が書かれておらず、押して傾く姿勢の問題を評価する道具ではありません。
- 3TMT:TMT(Trail Making Test)は、紙に散らばった数字や文字を順に線で結ぶ検査で、注意の働きや処理の速さをみます。座位や立位で押して傾く症状の程度は測れません。
- 4WAIS-Ⅳ:WAIS-Ⅳは成人用の知能検査で、言語理解や処理速度などを総合的に調べます。時間もかかり、転倒の危険が差し迫っているこの場面で最初に行う検査ではありません。
- 5WCST:WCST(ウィスコンシンカード分類検査)は、カードを分ける規則の切り替えを通して遂行機能をみる検査です。姿勢の傾きや押す動作の評価とは目的が異なります。
出典:第61回 理学療法士国家試験 午前(厚生労働省)問4(改変:1問ずつ解ける形に加工(状況設定の文を各問に複写・図を文字に書き写し))。解説は当サイト独自のもので、厚生労働省とは関係ありません。
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