第61回 午後 問13
理学療法評価学
この患者のAIS
28歳の男性。2日前に交通事故で受傷し、脊髄損傷と診断されて入院加療が行われている。Key muscleのMMTは両側三角筋5、肘屈筋5、肘伸筋2、手関節背屈筋5、中指末節屈筋0、小指外転筋0、下肢筋は全て0であった。感覚については両側乳頭部まで触覚、痛覚が保たれていたが、それ以下の体幹部、下肢は脱失していた。直腸診では肛門の随意収縮、肛門深部圧、周囲の感覚は消失していた。この患者のAISはどれか。
- 1A
- 2B
- 3C
- 4D
- 5E
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✓ これが正解1A
解説
仙髄の感覚も肛門の随意収縮もないので、AISはAです。
AIS(ASIA機能障害尺度)は、損傷が完全か不完全かを最下位の仙髄(S4–5)の機能が残っているか、すなわち仙髄回避(sacral sparing)で判断します。肛門周囲の触覚・痛覚、肛門深部圧、肛門の随意収縮のどれか1つでも残っていれば不完全損傷、すべて消失していれば完全損傷でAとなります。
この症例は、直腸診で肛門の随意収縮、肛門深部圧、肛門周囲の感覚がすべて消失しています。上肢には三角筋や肘屈筋など一部の筋力が保たれ、乳頭の高さまで感覚がありますが、それは損傷高位の判断材料であって、完全か不完全かは仙髄の所見で決まります。したがってAISはAです。
Bは運動は完全麻痺でも仙髄に感覚が残る場合、CとDは仙髄回避があり損傷高位より下の運動機能が残る場合で、key muscleの半分以上がMMT3以上かどうかでCとDを分けます。Eは運動・感覚とも正常です。まず仙髄回避の有無でAとそれ以外を分け、次に感覚だけか運動もか、最後に筋力の程度で分ける、という順序で判定すると迷いません。受傷後早期は脊髄ショックの影響もあるため、経過で再評価することも覚えておきましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2B:Bは運動機能は完全麻痺でも、仙髄(S4–5)の感覚や肛門深部圧が残っている不完全損傷です。この症例は肛門周囲の感覚も深部圧も消失しているので当たりません。
- 3C:Cは仙髄回避があり、損傷高位より下の運動機能が残るもののkey muscleの半数以上がMMT3未満の状態です。肛門の随意収縮も感覚も無いため該当しません。
- 4D:Dは仙髄回避があり、損傷高位より下のkey muscleの半数以上がMMT3以上の状態です。下肢筋がすべて0で仙髄の機能もないので当たりません。
- 5E:Eは運動機能・感覚機能ともに正常と判定される場合です。下肢が完全に麻痺しているこの症例は明らかに異なります。
出典:第61回 理学療法士国家試験 午後(厚生労働省)問13(改変:1問ずつ解ける形に加工(状況設定の文を各問に複写・図を文字に書き写し))。解説は当サイト独自のもので、厚生労働省とは関係ありません。
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