第38回 問題38
権利擁護を支える法制度
事例を読んで,次のうち,事件当時にAさんに備わっていたか否かが問われる能力として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Aさん(15歳)は,口論の末,Bさんを殴ってしまい,Bさんにけがを負わせてしまった。Bさんは,Aさんに対し,治療費を請求することを考えている。
- 1行為能力
- 2事理弁識能力
- 3意思能力
- 4権利能力
- 5責任能力
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✓ これが正解5責任能力
解説
不法行為の賠償責任を負うかは、加害時の責任能力の有無で判断されます。
事例の決め手は、15歳のAさんがBさんを殴ってけがを負わせ、Bさんが治療費の請求を考えている点です。これは、故意または過失によって他人の権利を侵害した者が、生じた損害を賠償する責任を負う不法行為の場面です。
民法第712条は、未成年者が他人に損害を加えた場合に、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わないと定めています。この、自分の行為が法律上の責任を生じることを理解できる能力を責任能力といいます。おおむね12歳前後が一つの目安とされ、15歳のAさんには通常備わっていると考えられますが、事件当時にそれが備わっていたかどうかが、賠償責任を負うかの分かれ目になります。したがって、責任能力が最も適切です。
なお、加害者に責任能力がない場合には、親などの監督義務者が代わりに責任を負う仕組みが民法に置かれています。
契約などの取引の場面では行為能力や意思能力、不法行為の場面では責任能力、と問われる場面で区別すると判断しやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1行為能力:行為能力は、契約などの法律行為を単独で有効に行うことができる能力で、未成年者が取引をする場面で問題になります。けがを負わせた損害の賠償という不法行為の場面で問われる能力ではありません。
- 2事理弁識能力:事理弁識能力は、物事の是非や利害を判断する能力で、成年後見制度で後見・保佐・補助のどれを利用するかを判断するときの基準となる言葉です。不法行為の賠償責任を負うかどうかの判断基準ではありません。
- 3意思能力:意思能力は、自分の行為の結果を理解して判断する能力で、これを欠いた状態で行った法律行為は無効とされます。契約など法律行為の有効性で問われるもので、不法行為の賠償責任を判断する能力とは別です。
- 4権利能力:権利能力は、権利や義務の主体となることができる資格で、人は生まれた時から等しくもっています。誰にでも備わるものなので、事件当時に備わっていたかどうかが問われる能力ではありません。
出典:第38回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題38。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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