第112回 午前 問50
公衆衛生看護管理論
統括保健師に関する問題
次の文を読み48~50の問いに答えよ。
A市で震度6強の地震が発生した。発災後9日目、立ち上げた10か所の避難所では、他自治体から派遣された保健師チームが、避難所の環境整備や避難者の健康観察を行っている。
A市の保健師は派遣された保健師チームから「避難者の中で6割以上を占める高齢者は、区画されたエリアで日中座っていることが多い。内服薬があと数日でなくなる人も散見される。地震を思い出して夜間眠れないという声が増えてきた。乳幼児を連れた家族は家族だけの時間を持ちたいと言い車中泊に切り替えた人もいる。日中、避難所に人が少ない時に、これまで見かけなかった人が避難所を覗いていたという声がある」という報告を受けた。
発災後2か月が過ぎ、A市では親族宅へ引っ越したり仮設住宅へ入居したりする人も増えてきた。保健師は、被災者の中に生活再建に希望を持てず不安が強い人や、家族を失い孤独感を強めている人、避難先でこれまでのコミュニティを失い役割を見出せず無気力になっている人、これらによって閉じこもりがちになっている人等、支援が必要な人が複数いることを把握している。
発災後7か月が経過し、ボランティアも含め外部支援者は減ってきた。A市では、12名の保健師の内2名が被災によって退職した。働いている保健師の中には「笑っても良いのだと思ったのは被災後6か月だった」と語る人もいる。一方で、住民からは育児相談や中断している育児支援教室に関する問い合わせが増えてきた。A市の統括保健師は、休止していた母子保健事業の全面再開と共に、次の災害へ備えた保健師の活動体制作りを考えている。A市の統括保健師によるスタッフへの対応で適切なのはどれか。
- 1保健所保健師に事業の再開を依頼する。
- 2保健師チームによる応援の増強を要請する。
- 3住民への全戸訪問を最優先するように伝える。
- 4職場で保健師自らの気持ちを話す機会を作る。
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✓ これが正解4職場で保健師自らの気持ちを話す機会を作る。
解説
被災した保健師自身の気持ちを話せる機会を職場で作ります。
被災地で働く保健師は、住民を支える支援者であると同時に、自身も被災者です。家族や住まいを失ったり、長い期間休みなく働いたりする中で、強いストレスを抱えていることが少なくありません。A市では保健師2名が退職し、笑ってもよいと思えたのが被災後6か月だったと語る保健師もいます。支援者自身の心の回復を支えることが、統括保健師の大切な役割です。
職場で保健師が自らの気持ちを話せる機会をつくると、互いの体験や思いを分かち合い、ひとりで抱え込まずにすみます。心の不調の早期の気づきにもつながり、母子保健事業の再開や次の災害への備えを担う体制を保つ土台になります。外部支援者が減る時期は、地元の職員が自分たちの力で通常業務に戻していく段階であり、応援の増強や、職員の負担をさらに増やす全戸訪問の優先は、この時期の対応として適しません。
したがって、職場で保健師自らの気持ちを話す機会を作ることが適切です。災害の中長期では、住民だけでなく支援者である職員のケアも統括保健師の役割に含まれる、と押さえておくと判断しやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1保健所保健師に事業の再開を依頼する。:母子保健事業の多くは市町村が実施する事業で、A市自身が再開を担うものです。保健所保健師に事業の再開を依頼するのは役割の分担として適切ではなく、職員への支援にもなりません。
- 2保健師チームによる応援の増強を要請する。:発災後7か月は、外部の支援が減り、地元の職員が通常の業務に戻していく時期です。応援の増強を求めるより、A市の保健師の体制と心の健康を立て直すことが求められます。
- 3住民への全戸訪問を最優先するように伝える。:住民への全戸訪問を最優先にすると、退職者が出て人手が減り、心の疲れも残る保健師の負担がさらに重くなります。職員の状態を考えない指示は、統括保健師の対応として適切ではありません。
出典:第112回 保健師国家試験 午前(厚生労働省)問50(改変:1問ずつ解ける形に加工(状況設定の文を各問に複写・図を文字に書き写し))。解説は当サイト独自のもので、厚生労働省とは関係ありません。
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