第38回 問題33
コミュニケーション技術
Aさん(72歳,男性)は記憶障害があり,介護施設に入居している。ある日,介護福祉職にAさんが,「あの,ちょっとお願いがあるんです。ええとね,実は,お昼ご飯をほとんど残しちゃいました…。それでね…,あ,あれかな,調理師さんはがっかりしたかな,私はずっと食堂をやっていたんですよ。店はけっこう繁盛していたけど閉めることになってね。あ,ええと何の話だったかな…」と話しかけてきた。
次のうち,このときのAさんの発言を促すための介護福祉職の応答として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1「Aさんは,お店を閉めたくなかったのですね」
- 2「Aさんは,どんな料理が得意だったのですか」
- 3「調理師さんのことは気にしなくていいですよ」
- 4「どこかからだの具合が悪いのではないですか」
- 5「何かお願いがあるのではありませんか」
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✓ これが正解5「何かお願いがあるのではありませんか」
解説
話の最初にあったお願いに戻れるよう促す応答が適切です。
事例の決め手は、Aさんが最初にお願いがあると切り出したのに、昼ご飯を残したこと、調理師の気持ち、自分の食堂の話へと話題が移り、最後に何の話だったかなと、本来の話題を見失っている点です。記憶障害があると、話しているうちに目的を忘れてしまうことがあります。
このとき、話の出発点であるお願いを思い出せるよう、何かお願いがあるのではないかと問いかけると、Aさんは本当に伝えたかったことに戻って話を続けられます。本人が言いたいことを言えるように手がかりを示すことが、発言を促す応答として最も適切です。
店を閉めた気持ちや得意な料理をたずねる応答は、話題をさらに脇道へ広げます。調理師のことは気にしなくてよいと打ち消す応答や、体調の悪さを推測する応答は、Aさんのお願いの中身を聞かないまま介護福祉職が話をまとめてしまいます。話題を見失った人には、話の最初の目的に戻る手がかりを渡す、と覚えておくと選びやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1「Aさんは,お店を閉めたくなかったのですね」:店を閉めた話は、話の流れの途中で出てきた思い出です。その気持ちを取り上げると、話題はさらに過去へ移り、Aさんが最初に伝えようとしたお願いから遠ざかってしまいます。
- 2「Aさんは,どんな料理が得意だったのですか」:得意な料理をたずねると、食堂の思い出話が広がり、Aさんが本来伝えたかったお願いに戻るきっかけが失われます。今の場面で発言を促す応答としては、焦点がずれています。
- 3「調理師さんのことは気にしなくていいですよ」:調理師のことを気にしなくてよいと打ち消すと、Aさんの気持ちを十分に聞かないまま話を終わらせることになります。お願いの中身も確かめられず、発言を促す応答になっていません。
- 4「どこかからだの具合が悪いのではないですか」:Aさんは体の不調を訴えているわけではありません。介護福祉職が推測で体調の話へ持っていくと、Aさんの言いたかったことから話がそれ、お願いを伝える機会を失わせてしまいます。
出典:第38回 介護福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題33。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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