第38回 問題53
生活支援技術
Aさん(83歳,男性,要介護1)は,一人暮らしで,少額の年金で生活している。Aさんは軽度の認知症(dementia)と診断を受けている。近所には親しくしている人が複数人いる。ある日,訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問すると,近所のスーパーで購入した未開封の健康食品が山積みになっていた。Aさんが財布を持ってきて,「買いたいものがたくさんあるが,お金が足りない。どうしたらよいか」と訪問介護員(ホームヘルパー)に相談した。
このときの訪問介護員(ホームヘルパー)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1「お金は足りているから安心して大丈夫ですよ」と伝える。
- 2近所の親しい人に,財布を預かってもらえるか,聞いてみる。
- 3鍵付きの引き出しに財布を入れ,訪問介護員(ホームヘルパー)が鍵を管理する。
- 4「お金の使い方について,一緒に考えてみませんか」と提案する。
- 5健康食品のクーリング・オフを勧める。
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✓ これが正解4「お金の使い方について,一緒に考えてみませんか」と提案する。
解説
本人の相談を受け止め、お金の使い方を一緒に考える提案をします。
決め手は、軽度の認知症があり少額の年金で暮らすAさんが、未開封の健康食品を買い込みながらも、自分から財布を持ってきて、お金が足りないがどうしたらよいかと相談している点です。本人には困りごとを自覚して解決したいという気持ちがあり、その気持ちを生かす関わりが求められます。
根拠なく安心させる、財布を近所の人や訪問介護員が預かる、商品の返品を勧める、といった対応は、本人の相談の中身に応えておらず、自分のお金の使い道を自分で決めるという本人の権利(自己決定)をないがしろにします。
正しいのは、お金の使い方について一緒に考えてみませんかと提案することです。何を買いたいのか、毎月どのくらい使えるのかを本人と一緒に整理することで、本人の意思を尊重しながら暮らしを立て直す支援につながります。必要に応じて介護支援専門員などに状況を伝え、金銭管理を支える仕組みにつなぐことも考えます。
見分け方は、本人の相談に向き合い、本人が決めることを支える対応を選ぶことです。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1「お金は足りているから安心して大丈夫ですよ」と伝える。:年金が少なく買い込みも続いている状況で、お金は足りていると伝えるのは事実に基づかない気休めです。本人の困りごとを受け止めずに話を終わらせてしまい、問題の解決にもつながりません。
- 2近所の親しい人に,財布を預かってもらえるか,聞いてみる。:大切な財布を近所の人に預けると、金銭をめぐるトラブルや人間関係の悪化を招くおそれがあります。本人の財産の管理を、訪問介護員の判断で第三者に委ねることはできません。
- 3鍵付きの引き出しに財布を入れ,訪問介護員(ホームヘルパー)が鍵を管理する。:訪問介護員が利用者の財布や鍵を管理することは支援の範囲を超えるうえ、本人が自分のお金を使う権利を奪います。紛失やあらぬ疑いを招くもとにもなり、専門職として避けるべき対応です。
- 5健康食品のクーリング・オフを勧める。:近所のスーパーの店頭で自分で選んで買った品は、一般にクーリング・オフの対象とされていません。そもそもAさんは返品ではなく、買いたい物とお金のやりくりについて相談しているので、相談の中身にも合っていません。
出典:第38回 介護福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題53。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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