第60回 午前 問9
理学療法評価学
理学療法評価学に関する問題
32歳の男性。右上肢の筋力低下を訴えて受診し、理学療法が開始された。筋力を評価するために、右上肢を前方挙上して壁を押させた時の様子を図に示す。その結果、右肩甲骨の内側縁全体が胸郭から離れる現象が認められた。筋力低下が最も疑われる筋はどれか。
〔図〕右上肢を前方挙上して壁を押させた時の様子(背面の絵。所見は設問の文に書かれているので本文だけで成立する)
- 1棘下筋
- 2肩甲下筋
- 3広背筋
- 4前鋸筋
- 5大円筋
答えと解説を見る
✓ これが正解4前鋸筋
解説
壁押しで肩甲骨内側縁が浮くのは、前鋸筋の筋力低下です。
肩甲骨の内側縁が胸郭から浮き上がる現象は、翼状肩甲と呼ばれます。肩甲骨を胸郭に押しつけて前方へ引き出す働きを持つのが前鋸筋で、この筋が弱いと、腕を前に出して壁を押したときに肩甲骨が胸郭に固定されず、内側縁全体が後方へ浮き上がります。前鋸筋は長胸神経に支配されており、この神経の障害でも同じ所見がみられます。
棘下筋は上腕の外旋、肩甲下筋は上腕の内旋に働く回旋筋腱板の筋で、肩甲骨を胸郭に押しつける働きは主ではありません。広背筋と大円筋は上腕を伸展・内転・内旋させる筋で、腕を前方に挙げて壁を押す動作の主役ではなく、弱っても内側縁全体が浮く所見にはつながりません。
したがって、筋力低下が最も疑われるのは前鋸筋です。壁押しで内側縁全体が浮いたら前鋸筋とその支配神経の長胸神経、と所見と筋をひと組にして覚えておくと迷いません。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1棘下筋:棘下筋は肩甲骨の後面から起こり、上腕を外旋させる回旋筋腱板の筋です。壁を押す動作で肩甲骨を胸郭に押しつける役割は担っておらず、内側縁が浮く原因とは考えにくい筋です。
- 2肩甲下筋:肩甲下筋は肩甲骨の前面から起こり、上腕を内旋させる筋です。肩甲骨そのものを胸郭に固定して前へ引き出す働きは主ではないため、この所見の説明には合いません。
- 3広背筋:広背筋は上腕を伸展・内転・内旋させる大きな筋で、腕を後ろへ引く動作で強く働きます。前方に挙上して壁を押す動作で肩甲骨を胸郭に押さえる筋ではありません。
- 5大円筋:大円筋は肩甲骨の下角付近から上腕骨へ付き、上腕の伸展・内転・内旋に働きます。肩甲骨を胸郭に押しつける作用は乏しく、内側縁全体の浮き上がりとは結び付きません。
出典:第60回 理学療法士国家試験 午前(厚生労働省)問9(改変:1問ずつ解ける形に加工(状況設定の文を各問に複写・図を文字に書き写し))。解説は当サイト独自のもので、厚生労働省とは関係ありません。
この解説に誤りを見つけたら教えてください。直して、直した記録を残します。誤りを報告する(メールが開きます)