第38回 問題98
貧困に対する支援
事例を読んで,Aさんの就労に関する福祉事務所の対応について,次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
アパートで一人暮らしのAさん(40歳)は,派遣切りにあったのち,わずかな貯えで生活していた。入院をきっかけに生活保護となったが,先月退院し,アパートに戻った。しかし,まだ生活の見通しは立っていない。Aさんは腰痛を訴えており定期的に通院をしているが,日常生活では問題は生じてはいないようである。
- 1稼働能力活用は生活保護の要件であることから就労指導を行い,それでも就労しない場合には,速やかに保護を廃止する。
- 2主治医に対して病状調査を依頼し,主治医より就労可能の診断がされた場合は,直ちに就労指導についての文書による指示を行う。
- 3Aさんに公共職業安定所(ハローワーク)での求職を指示し,当月分保護費は公共職業安定所で求職したことを確認してから翌月に支給する。
- 4年齢や医学的な面からの評価だけではなく,資格,生活歴,職歴を客観的総合的に勘案してAさんの稼働能力の有無を評価する。
- 5生活保護の目的が自立助長であることを説明し,自立意欲が無いならば生活保護の辞退届を提出させるように担当の現業員に指示する。
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✓ これが正解4年齢や医学的な面からの評価だけではなく,資格,生活歴,職歴を客観的総合的に勘案してAさんの稼働能力の有無を評価する。
解説
稼働能力は年齢・医学面に加え、資格・生活歴・職歴から総合的に評価する。
事例のAさんは、派遣切りの後に入院をきっかけに生活保護を受け、先月退院したばかりです。腰痛で定期的に通院しているものの、日常生活には問題がないようです。決め手は、まだ生活の見通しが立っていない段階で、就労について福祉事務所がどう判断を始めるかという点です。支援の段階でいえば、就労支援の前のアセスメントにあたります。
生活保護では、利用し得る能力を活用することが保護の要件とされ、働く能力(稼働能力)の活用もその一つです。稼働能力を活用しているかどうかは、稼働能力があるか、その能力を活用する意思があるか、実際に活用する就労の場を得ることができるか、の3点から判断するとされています。このうち稼働能力の有無は、年齢や医学的な面からの評価だけでなく、その人の資格、生活歴・職歴などを把握・分析し、客観的かつ総合的に評価することとされています。この考え方に沿う記述が最も適切です。
ほかの記述は、保護の手続や趣旨に合いません。就労の指導に従わないことを理由に保護を変更・停止・廃止するには、文書による指導・指示と弁明の機会を経る手続が必要で、すぐに廃止することはできません。保護費の支給を求職の確認まで遅らせたり、辞退届を出させたりすることも、最低限度の生活の保障という制度の趣旨に反します。
稼働能力の判断は、能力・意思・就労の場の3点で、能力は総合的に評価する、と覚えておくと見分けやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1稼働能力活用は生活保護の要件であることか…:就労の指導や指示に従わないことを理由に保護を変更・停止・廃止するには、文書による指示と弁明の機会の付与などの手続を踏む必要があります。退院直後のAさんについて、速やかに保護を廃止するという対応は手続を欠いています。
- 2主治医に対して病状調査を依頼し,主治医よ…:主治医の意見は判断材料の一つにすぎず、本人の生活歴や職歴、就労の場の状況なども合わせて判断します。就労可能との診断だけで直ちに文書指示に進むのは、段階を踏んだ支援を飛ばしています。
- 3Aさんに公共職業安定所(ハローワーク)で…:求職したことを確認するまで当月分の保護費の支給を遅らせることは、最低限度の生活を保障する制度の趣旨に反します。求職活動を保護費支給の条件のように扱う運用は認められていません。
- 5生活保護の目的が自立助長であることを説明…:辞退届は本人の任意かつ真摯な意思によるものでなければならず、自立意欲がないと決めつけて提出させるのは不適切です。自立の助長は、本人の状況に応じた支援を通じて図るものです。
出典:第38回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題98。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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