第38回 問題125
福祉サービスの組織と経営
事例を読んで,A社会福祉士を中心に実施した一連の取組において重視した次の考え方のうち,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
B障害福祉施設では,中堅・ベテラン職員による「経験に基づく支援・業務」が最も重視され,若手職員が育成されないまま離職してしまうということが相次いだ。そこでAは,会議を定期的に開催して,他の職員と一緒に特に定型的な業務にかかる時間を測定し,不適切な手順や無駄な動作のある業務を洗い出し,効率的な方法を検討した。また,利用者の特性に応じた支援マニュアルなどを作成した。会議は継続して行われ,支援方法の改善や不要な業務の廃止に取り組んだ。会議での議論の積み重ねから,法人理念の改訂について,理事会へ提案するなどの活動にも至った。これら一連の取組の中で,職員間のコミュニケーションも増え,職員の定着率も上がっていった。
- 1エンゲージメント
- 2リスキー・シフト
- 3ダブル・ループ学習
- 4科学的管理法
- 5ハインリッヒの法則
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✓ これが正解3ダブル・ループ学習
✓ これが正解4科学的管理法
解説
業務の時間測定と手順の標準化は科学的管理法、理念の見直しはダブル・ループ学習。
事例の決め手は、Aが中心となって進めた取組の中身です。Aは会議を定期的に開き、定型的な業務にかかる時間を測定し、不適切な手順や無駄な動作を洗い出して効率的な方法を検討し、支援マニュアルを作成しました。さらに会議を重ねる中で、支援方法の改善や不要な業務の廃止だけでなく、法人理念の改訂を理事会に提案するところまで進みました。2つ選ぶ問です。
1つめは科学的管理法です。テイラーが提唱した考え方で、作業にかかる時間や動作を測定・分析して最も効率的な手順を定め、それを標準化して管理するものです。経験や勘に頼っていた業務の時間を測り、無駄を洗い出してマニュアルにまとめたAの取組は、この考え方を重視したものといえます。
2つめはダブル・ループ学習です。アージリスらが示した組織学習の考え方で、決められた目標や前提のもとで行動を修正するシングル・ループ学習に対し、その目標や前提、価値観そのものを問い直して変える学習をいいます。業務の改善にとどまらず、組織の根本にある法人理念の改訂まで提案したことは、ダブル・ループ学習にあたります。
一方、エンゲージメントは職員が仕事に熱意をもって打ち込んでいる状態を指し、取組の結果として職員の定着につながった面はあっても、取組で重視した考え方の中心ではありません。リスキー・シフトは集団で決めると危険な方向の結論になりやすい現象、ハインリッヒの法則は重大事故の背後に多くの軽微な事故やヒヤリハットがあるという経験則です。時間の測定と標準化ならテイラー、前提の問い直しならダブル・ループ、と結びつけて覚えます。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1エンゲージメント:エンゲージメントは、職員が組織や仕事に愛着と熱意をもって主体的に取り組んでいる状態を指します。事例で職員の定着率が上がったのは取組の結果であり、取組の中で重視された考え方は業務の分析や理念の見直しです。
- 2リスキー・シフト:リスキー・シフトは、集団で話し合って決めると、個人で決めるよりも危険性の高い結論に傾きやすいという集団意思決定の現象です。事例の会議は業務の効率化や理念の見直しに取り組んだもので、この現象とは関係しません。
- 5ハインリッヒの法則:ハインリッヒの法則は、1件の重大な事故の背後には多くの軽微な事故や、事故に至らないヒヤリハットがあるという経験則で、事故防止の考え方として使われます。事例の業務改善の取組とは関係しません。
出典:第38回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題125。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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