第26回 問題58
ソーシャルワークの理論と方法(専門)
次の事例を読んで,問題58から問題60までについて答えなさい。
〔事 例〕
Q市障害福祉課に勤務するH精神保健福祉士に,地域包括支援センターの主任ケアマネジャーから電話があり,「ホームヘルパーから,『訪問に行くと,同居する子が部屋から出て来ないし外出もしないと言われ,その対応の仕方が分からない』と相談されて困っている」とのことだった。H精神保健福祉士は,その話を聞きながら,新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり,Q市には同様のひきこもり課題を抱える事例が他にもあるのではないかと思った。(問題58)
Q市におけるひきこもりの事例では,「退職」や「新型コロナウイルス感染症」をきっかけとするものが目立ち,ひきこもり期間は「2年から3年未満」が多かった。H精神保健福祉士はのちに開催された「協議会」において現状を報告し,ひきこもり問題に対応するため,専門部会の立ち上げを提案して,承諾された。その後,保健所,基幹相談支援センター,ひきこもり地域支援センター,ひきこもり支援をしているNPO法人,Q市社会福祉協議会,地域包括支援センターが集まり,第一回の専門部会を開催することとなった。専門部会ではH精神保健福祉士がQ市の現状報告後,ファシリテーターとなり,参加者に支援の悩みやひきこもっている人のメンタルヘルスに関連する課題等について自由に意見を出し合ってもらった。意見としては,「女性のひきこもっている人の増加が目立ち始め,このままだと長期化し,メンタルヘルス問題の悪化が懸念される」こと,「それまであった人間関係も疎遠になって家族以外と会話していない」こと,「親を介護しながら扶養されている」こと,「自分の先行きが不安になって不眠に陥っている」こと等が挙がった。(問題59)
数回にわたる専門部会のまとめとして,「女性の増加が目立ち,彼女たちは,もう一度誰かとつながりたいという気持ちがあるがなかなか自分からは行動しにくいようだ」ということで意見が一致した。そして,専門部会は新たな取組の提案と報告を行い,それを受けたQ市は提案に基づく取組を行うこととした。(問題60)
(注) 「協議会」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」に基づき行われる協議会のことである。
次のうち,この後にH精神保健福祉士が行うこととして,適切なものを1つ選びなさい。
- 1ソーシャルネットワーク
- 2ソーシャルワークリサーチ
- 3ソーシャルサポート
- 4ソーシャルキャピタル
- 5ソーシャルグループワーク
答えと解説を見る
✓ これが正解2ソーシャルワークリサーチ
解説
同様の事例の実態をつかむために行うのは、ソーシャルワークリサーチです。
この問は同じ事例の1問目で、(問題58)の段落が中心です。Q市障害福祉課のH精神保健福祉士は、ひきこもりの子への対応に困っているという相談を受けながら、市内には同様のひきこもりの課題を抱える事例が他にもあるのではないかと考えました。問いは、この後にH精神保健福祉士が行うことです。
決め手は、一つの相談から地域全体の課題へと視点を広げている点です。他にも同じような事例があるかを確かめるには、ケースを集め、きっかけや期間などの傾向を調べ、地域の実態として示す必要があります。こうした調査や分析を通じて支援の根拠をつくり、実践や施策の改善につなげることをソーシャルワークリサーチといいます。
実際に続く(問題59)の段落では、退職や新型コロナウイルス感染症をきっかけとする事例が目立ち、ひきこもり期間は2年から3年未満が多かった、という実態が示されています。H精神保健福祉士はこの結果を協議会に報告し、専門部会の立ち上げにつなげています。調査で地域の課題を明らかにした後で協議の場を動かしたという流れから見ても、この時点で行ったのはソーシャルワークリサーチです。
他の言葉は、人と人のつながりそのもの、周囲からの支え、地域の信頼関係などの資源、集団を活用した援助を指すもので、実態を調べる行為を表してはいません。見分け方として、個別の相談から地域の傾向を調べる動きはリサーチ、と押さえておくとよいでしょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1ソーシャルネットワーク:ソーシャルネットワークは、人と人、人と機関の間にあるつながりの網の目そのものを指します。他の事例があるかを調べて実態をつかむという行為を表す言葉ではありません。
- 3ソーシャルサポート:ソーシャルサポートは、家族や友人、地域の人などから受ける情緒的・実際的な支えのことです。市内の同様の事例を調べる行動とは意味が異なります。
- 4ソーシャルキャピタル:ソーシャルキャピタルは、地域の信頼関係や助け合いの規範、ネットワークを、社会全体の資源として捉える考え方です。実態調査という行為の名前ではありません。
- 5ソーシャルグループワーク:ソーシャルグループワークは、集団の力を活用して参加者の成長や課題解決を支える援助の方法です。地域の事例の傾向を調べる段階の行動とは別のものです。
出典:第26回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題58。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
同じ用語が出る問題
この解説に誤りを見つけたら教えてください。直して、直した記録を残します。誤りを報告する(メールが開きます)