第27回 問題40
精神障害リハビリテーション論
次の事例を読んで,問題40から問題42までについて答えなさい。
〔事 例〕
ある日,市役所の精神保健に関する相談窓口にAさん(43歳)が来庁し,担当のB精神保健福祉士に話をした。Aさんによると,会社員である夫(45歳)は,日頃の仕事のストレスに起因する過度の飲酒が原因で体調を崩し,身体疾患の治療のため入院をした。その後,退院を迎えるに当たり,Aさんと夫は,主治医から「体調は落ち着きましたが,アルコール依存症の可能性があるので,精神科の受診を勧めます」と提案を受けた。ところが,退院後,夫に精神科を受診するよう話したが全く聞こうとせず,激しく怒り出すようになった。また,夫が飲酒を再開してしまい,そのことについて,Aさんも夫に対し「なぜお酒を飲むの」と怒りの感情をぶつけたことから夫婦関係は悪化した。自分の力だけではどうにもならないと感じるようになり相談窓口を訪れたとのことであった。(問題40)
Aさんの話からB精神保健福祉士は,精神保健福祉センターで実施されているプログラムを紹介した。それは,アルコール依存症が疑われる人が精神科を受診しようとしない時に,本人のキーパーソンとなる人に介入することで,本人を受診につなげるための包括的なプログラムである。その説明を受け,Aさんからはプログラムへの参加の意思が示された。(問題41)
このプログラムに参加するようになり,しばらくして夫は精神科病院を受診することができた。夫は2か月休職し,入院治療を受けたことで自身の病状についての理解が進んだ。退院後間もなく,Aさんは夫と共に退院の報告を兼ねてB精神保健福祉士のもとを訪れた。夫は「いろいろありがとうございました。無事に退院したのですが,実は,ストレスがたまるとまた飲酒しそうで怖いです。どうしたら良いでしょうか」と語り,Aさんも「夫が飲酒を再開しないために,私も夫と一緒にやれることを探したいです」と述べた。B精神保健福祉士は,精神科の主治医に相談することも重要であることを説明しつつ,家族も参加できるアルコール依存症の患者本人を対象とした自助グループを紹介した。(問題42)
次の記述のうち,この時点のB精神保健福祉士の対応として,適切なものを1つ選びなさい。
- 1夫のケアを担うAさんの能力について評価を行う。
- 2Aさんの怒りの感情や無力感に対して肯定的に関わる。
- 3夫の入院治療を強く勧める。
- 4夫の客観的情報の収集を優先して行う。
- 5Aさんがイネイブラーとして夫を支える重要性を説明する。
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✓ これが正解2Aさんの怒りの感情や無力感に対して肯定的に関わる。
解説
まずAさんの怒りや無力感を受け止め、肯定的に関わります。
この問は、事例のうち(問題40)の印がある段落、Aさんが初めて市役所の相談窓口に来た場面を扱います。インテークの段階であり、相談に来たAさんとの関係づくりが最初の課題です。
決め手は、Aさんの状況と気持ちです。夫は精神科の受診を勧められても聞かず、怒り出すようになり、飲酒も再開しました。Aさんも夫に怒りをぶつけ、夫婦関係は悪化しています。そしてAさんは、自分の力だけではどうにもならないと感じて相談に来ました。ここには、夫への怒りと、どうすることもできない無力感が表れています。
アルコールの問題を抱える人の家族は、長い間ひとりで問題に向き合い、怒りや自責、疲れをため込んでいることが多くあります。家族自身が支援の対象であり、まずその気持ちを否定せずに受け止め、ここまでよく頑張ってきたこと、相談に来たこと自体を認めて肯定的に関わることが、援助関係の土台になります。家族が安心して話せるようになることで、次の支援、たとえば家族向けのプログラムへの参加にもつながっていきます。
見分け方は、初めて相談に来た家族に対しては、評価や説得より先に、気持ちの受け止めを置くことです。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1夫のケアを担うAさんの能力について評価を行う。:ケアを担う能力を評価することは、相談に来たばかりのAさんを試すような関わりになりかねません。怒りと無力感を抱えて来たこの時点では、先に気持ちを受け止めることが必要です。
- 3夫の入院治療を強く勧める。:夫はまだ精神科を受診しておらず、B精神保健福祉士が入院治療を強く勧める根拠も立場もありません。夫が受診を拒んでいる状況では、家族への支援から始めることが求められます。
- 4夫の客観的情報の収集を優先して行う。:夫に関する客観的な情報は支援に必要ですが、この場面で相談に来ているのはAさんです。情報収集を優先すると、助けを求めて来たAさんの気持ちが置き去りになってしまいます。
- 5Aさんがイネイブラーとして夫を支える重要性を説明する。:イネイブラーは、尻ぬぐいなどで結果的に飲酒を続けやすくしてしまう周囲の人を指します。その役割を勧めることは、アルコール依存症の回復を妨げる方向の助言になります。
出典:第27回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題40。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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