第28回 問題19
精神保健福祉の原理
ある日,精神科病院に勤務するA精神保健福祉士は,週明けに行われた担当病棟の看護部の申し送りで,3か月前に入院した患者Bさん(30代,男性)の祖父が亡くなったことを知った。Bさんは幼い時に両親が離婚し,その後は母親の実家で育てられ,祖父を大変慕っていた。先週末に母親から病棟スタッフへ電話があり「本来はBも葬儀に参列するべきであるが,祖父が亡くなったことへのショックや,慌ただしい葬儀への立会いの負担が病状に影響を与えるかもしれず,家族としても対応を決めかねている」とのことであった。そこで両者で検討の末,ようやく病状が落ち着いてきたBさんには,今は知らせずに葬儀を執り行うことを決定したとのことであった。申し送りでその報告を聞いたA精神保健福祉士は,家族の気持ちは理解できるものの,一連の対応に何か釈然としないものを感じた。
次のうち,Bさんに対する周囲の一連の対応を象徴するものとして,適切なものを1つ選びなさい。
- 1パターナリズム
- 2マルトリートメント
- 3インスティテューショナリズム
- 4施設コンフリクト
- 5イネイブリング
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✓ これが正解1パターナリズム
解説
本人のためと周囲が代わりに決めてしまう対応はパターナリズムです。
事例の対応を象徴する概念を選ぶ問題です。決め手は、Bさんの祖父の死を、母親と病棟スタッフが話し合い、Bさんの病状への影響を心配して、本人に知らせずに葬儀を行うと決めたという経過です。Bさんは祖父を大変慕っており、ようやく病状が落ち着いてきたところでした。
パターナリズムとは、本人の利益になると考えて、本人の意思を確かめないまま、立場の強い者が本人に代わって物事を決めてしまうことをいいます。家長主義、父権主義と訳されることもあります。この事例では、家族も病棟スタッフも善意から判断していますが、祖父の死を知り、別れの場に参加するかどうかを自分で決める機会を、Bさんから奪う結果になっています。A精神保健福祉士が釈然としないものを感じたのは、本人の知る権利や自己決定が尊重されていない点だといえます。
ほかの肢は、子どもへの不適切な養育、長期入院による無気力、施設の建設への反対運動、依存症者の問題を周りが支えてしまう関わりを指す言葉で、この場面には当てはまりません。
したがって適切なのはパターナリズムです。本人のためという理由で本人抜きに決めている場面を見たら、パターナリズムを思い浮かべるとよいでしょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2マルトリートメント:マルトリートメントは、子どもへの虐待を含む、大人の子どもに対する不適切な関わりや養育を広く表す言葉です。成人であるBさんへの今回の対応を表す言葉ではありません。
- 3インスティテューショナリズム:インスティテューショナリズムは、長い入院や施設での生活によって、意欲の低下や依存、無関心などが生じる状態を指します。周囲が本人に代わって決めたという今回の経過とは別の話です。
- 4施設コンフリクト:施設コンフリクトは、障害者施設などを建てる際に、近隣の住民が反対して起こる対立を指します。病院内で本人に知らせずに物事を決めた事例とは関係がありません。
- 5イネイブリング:イネイブリングは、依存症の人の後始末を周りが引き受けるなどして、結果的に問題行動が続くのを支えてしまう関わりです。Bさんの事例は依存症の問題ではありません。
出典:第28回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題19。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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