第38回 問題13
社会学と社会システム
デュルケーム(Durkheim, É.)の「自殺論」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1自殺傾向は,流行現象として捉える必要があるとした。
- 2自己本位的自殺は,戦争時に増加する。
- 3集団本位的自殺は,人々の欲求への規制が弱まることで生じる。
- 4アノミー的自殺は,経済的に衰退した時も,繁栄の時期にも増加する。
- 5宿命的自殺は,自己決定意欲が高まると増加する。
答えと解説を見る
✓ これが正解4アノミー的自殺は,経済的に衰退した時も,繁栄の時期にも増加する。
解説
アノミー的自殺は、不況期にも繁栄期にも増えるとデュルケームは考えました。
デュルケームは自殺論(1897年)で、自殺を個人の心理だけでなく社会的な事実として捉え、社会の統合の強さ(個人が集団に結びつく度合い)と規制の強さ(欲求を抑える社会の力)という二つの軸から、自殺を四つの類型に分けました。統合が弱すぎると自己本位的自殺、強すぎると集団本位的自殺、規制が弱すぎるとアノミー的自殺、強すぎると宿命的自殺が生じるとされます。
アノミーとは、社会の急激な変化によって欲求を抑える規範が弱まり、欲求が際限なく膨らむ状態です。デュルケームは、経済的な危機のときだけでなく、急に豊かになる繁栄の時期にも規範がゆらぎ、自殺が増えることを指摘しました。したがって、アノミー的自殺は経済的に衰退した時も繁栄の時期にも増加する、という記述が最も適切です。
統合(自己本位・集団本位)と規制(アノミー・宿命)の二つの軸について、弱すぎる場合と強すぎる場合で四つの類型を並べると整理できます。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1自殺傾向は,流行現象として捉える必要があるとした。:デュルケームは、自殺を模倣が広がる流行のような現象として説明する考え方を退け、社会の統合や規制のあり方という社会的な要因から説明しようとしました。流行現象として捉える必要があるとはしていません。
- 2自己本位的自殺は,戦争時に増加する。:自己本位的自殺は、個人と集団との結びつきが弱まったときに生じる類型です。戦争の時期には国民のまとまりが強まって社会の統合が高まるので、この類型の自殺はむしろ減少するとされました。
- 3集団本位的自殺は,人々の欲求への規制が弱まることで生じる。:集団本位的自殺は、集団への統合が強すぎて、個人が集団のために命を差し出すような場合に生じる類型です。人々の欲求への規制が弱まって生じる類型は別にあり、説明が入れ替わっています。
- 5宿命的自殺は,自己決定意欲が高まると増加する。:宿命的自殺は、欲求や将来が過度に抑えつけられ、閉塞した状況に置かれたときに生じる類型です。自己決定意欲が高まることで増えるのではなく、自由が奪われた状態で生じるとされます。
出典:第38回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題13。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
この解説に誤りを見つけたら教えてください。直して、直した記録を残します。誤りを報告する(メールが開きます)