第38回 問題19
社会福祉の原理と政策
次の記述のうち,イギリスのスピーナムランド制度の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1救済を求めて都市部に集中する貧民を分散するために,生まれ故郷の教区へ強制的に送還した。
- 2救済を申し込んだ貧民の労働能力の有無をテストするために,労役場を活用した。
- 3労働能力のある貧民が雇用されるまでの間は自宅に待機させ,貧民救済委員会による救済を施した。
- 4最低賃金制度がない状態で,パンの価格と家族の大きさによる基準と賃金との差額を賃金補助したため,賃金の引き下げ圧力を生むとともに,救貧税負担の増大を招いた。
- 5救済を受ける貧民の救済水準は,独立自活している最下層の労働者の生活水準を下回るものとした。
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✓ これが正解4最低賃金制度がない状態で,パンの価格と家族の大きさによる基準と賃金との差額を賃金補助したため,賃金の引き下げ圧力を生むとともに,救貧税負担の増大を招いた。
解説
スピーナムランド制度は、パンの価格と家族数に応じて賃金を補助しました。
スピーナムランド制度は、18世紀末(1795年)にイギリスのバークシャー州スピーナムランドで始まった救貧の方式です。パンの価格と家族の人数から最低限の生活に必要な額を基準として定め、労働者の賃金がその基準に満たない場合に、差額を救貧税から手当として補う仕組みでした。施設に入れずに行う院外救済を、働いている労働者にまで広げたものといえます。
この方式では、雇い主は賃金を低く抑えても差額が補われるため、賃金を引き下げる圧力が生まれました。その結果、補助を受ける労働者が増え、救貧税の負担が大きく膨らみました。こうした問題への批判が、1834年の新救貧法(改正救貧法)につながります。したがって、賃金補助が賃金の引き下げ圧力と救貧税負担の増大を招いたとする記述が最も適切です。
ほかの記述は、救貧法の歴史の中で、この制度より前後に設けられた別の仕組みの説明です。
時代順に、定住法、ワークハウス・テスト法、ギルバート法、スピーナムランド制度、新救貧法と並べて、それぞれの要点を押さえると区別しやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1救済を求めて都市部に集中する貧民を分散す…:貧民を生まれ故郷の教区へ送り返して移動を制限したのは、1662年の定住法(居住地法)です。働く貧民の賃金を補助する仕組みであるスピーナムランド制度とは、目的も時代も異なります。
- 2救済を申し込んだ貧民の労働能力の有無をテ…:救済を求める者を労役場に収容し、そこで働くかどうかで救済の必要性を確かめたのは、1722年のワークハウス・テスト法です。院外での賃金補助を行う制度とは異なります。
- 3労働能力のある貧民が雇用されるまでの間は…:労働能力のある貧民に仕事が見つかるまで自宅で救済を与える院外救済を認めたのは、1782年のギルバート法です。スピーナムランド制度はこの流れを受け継ぎ、働いている労働者の賃金を補助した点が異なります。
- 5救済を受ける貧民の救済水準は,独立自活し…:救済を受ける者の生活水準を、自活する最下層の労働者よりも低くするという考え方は、1834年の新救貧法で採られた劣等処遇の原則です。賃金の差額を補う制度の説明ではありません。
出典:第38回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題19。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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