第36回 問題63
医療的ケア
Eさん(75歳,女性)は,介護老人福祉施設に入所している。脳梗塞(cerebral infarction)の後遺症があり,介護福祉士が胃ろうによる経管栄養を行っている。
ある日,半座位で栄養剤の注入を開始し,半分程度を順調に注入したところで,体調に変わりがないかを聞くと,「少しお腹が張ってきたような気がする」とEさんは答えた。意識レベルや顔色に変化はなく,腹痛や嘔気はない。
次のうち,介護福祉士が看護職員に相談する前に行う対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1嘔吐していないので,そのまま様子をみる。
- 2仰臥位(背臥位)にする。
- 3腹部が圧迫されていないかを確認する。
- 4注入速度を速める。
- 5栄養剤の注入を終了する。
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✓ これが正解3腹部が圧迫されていないかを確認する。
解説
まず、腹部が圧迫されていないかを確認します。
決め手は、Eさんが注入の途中で少しお腹が張ってきたような気がすると答えた一方で、意識レベルや顔色に変化がなく、腹痛や嘔気もないという様子です。全身の状態は落ち着いており、まずは腹部の張りの原因として、すぐに確かめて整えられることがないかを考える場面です。
半座位で注入していると、時間がたつうちに体がずり下がって腹部が折れ曲がったり、衣服やベルト、掛け物が腹部を締めつけたりして、腹部が圧迫されることがあります。腹部が圧迫されていると、胃がふくらみにくくなり、張りや逆流の原因になります。そこで、看護職員に相談する前に、姿勢や衣服などで腹部が圧迫されていないかを確かめることが、介護福祉士がまず行う対応になります。
ほかの対応は適切ではありません。嘔吐していないからと何もせずに様子をみると、悪化の兆しを見逃します。仰臥位にすると、胃の内容物が逆流しやすくなり、嘔吐や誤嚥の危険が高まります。注入速度を速めると、胃に入る量が一度に増え、張りが強くなります。注入を終了するかどうかは、状態を確かめたうえで看護職員と相談して判断することで、介護福祉士がこの段階で単独で決めることではありません。
覚え方としては、経管栄養中の小さな異変には、姿勢と腹部の圧迫を確かめてから看護職員へつなぐ、と順番で押さえておくと見分けやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1嘔吐していないので,そのまま様子をみる。:お腹の張りは、腹部の圧迫や注入のペースなどに問題があるサインかもしれません。嘔吐がないことだけを理由に何も確かめずにいると、悪化の兆しを見逃すおそれがあります。
- 2仰臥位(背臥位)にする。:上半身を水平に戻すと、胃の中の栄養剤が食道へ逆流しやすくなり、嘔吐や誤嚥の危険が高まります。注入中や注入直後は、上半身を起こした姿勢を保つことが基本です。
- 4注入速度を速める。:張りを訴えているときにペースを上げると、胃に一度に入る量が増え、張りや嘔吐を悪化させるおそれがあります。原因を確かめずに注入を早めることは避けます。
- 5栄養剤の注入を終了する。:意識や顔色に変化がなく、張りの訴えも軽い段階です。注入を打ち切るかどうかは、原因を確かめ、看護職員と相談したうえで判断することで、この時点で介護福祉士が一人で決めることではありません。
出典:第36回 介護福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題63。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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