平成30年度 問3
民法
債務不履行に関する問題
債務不履行責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 1損害賠償額が予定されている場合において、債務不履行の事実があったときは、債権者は、原則として、損害の発生及び損害額を証明することなく、予定された賠償額を請求することができる。
- 2損害賠償額が予定されている場合において、債務不履行の事実があったとき、債権者は、実際の損害額が予定賠償額より大きいことを立証しても賠償額の増額を請求することができない。
- 3債務不履行により通常生ずべき損害が生じた場合、債務者が、当該債務不履行時までにその損害が生じることを予見し、又は予見することができた場合でなければ、債権者は、損害賠償を請求することができない。
- 4金銭債務の債務者は、不可抗力により期日に金銭の支払をすることができなかったときであっても、その不履行によって生じた損害の賠償責任を免れない。
答えと解説を見る
✓ これが正解3債務不履行により通常生ずべき損害が生じた場合、債務者が、当該債務不履行時までにその損害が生じることを予見し、又は予見することができた場合でなければ、債権者は、損害賠償を請求することができない。
解説
通常生ずべき損害は、予見できたかを問わず賠償を請求できます。
債務不履行による損害賠償の範囲は、民法第416条で決まります。第1項は、通常生ずべき損害の賠償をさせることを目的とすると定め、予見できたかどうかを条件にしていません。予見が問題になるのは、第2項の特別の事情によって生じた損害だけです。
通常損害について、債務者が予見し又は予見することができた場合でなければ請求できないとする記述は、特別損害の条件を通常損害に持ち込んでおり、誤っています。これが正解です。
損害賠償額の予定(あらかじめ賠償額を決めておく約束)があれば、債権者は不履行の事実を示すだけで、損害の発生や額を証明しなくても予定額を請求できます。出題当時の第420条第1項は、裁判所はその額を増減することができないと定めていたので、実際の損害が大きくても増額は求められません。金銭債務では、第419条第3項により債務者は不可抗力を抗弁にできません。
予見の話は特別損害だけ、と覚えると判断が速くなります。出題当時は第420条第1項に額を増減できないという後段があり、第416条第2項は予見し又は予見することができたときと定めていました。現在は民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号、2020年4月1日施行)により第420条第1項の後段が削られ、第416条第2項は予見すべきであったときという表現になっています。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1損害賠償額が予定されている場合において、…:賠償額の予定は、損害の有無や金額をめぐる争いを避けるための約束です。債権者は債務不履行の事実を示せば予定された額を請求でき、損害の発生や額の証明は求められないので、記述は正しい内容です。
- 2損害賠償額が予定されている場合において、…:出題当時の条文では、予定された賠償額を裁判所が増やしたり減らしたりすることは認められていませんでした。実損が予定額を上回ると立証しても増額は請求できないので、記述は正しい内容です。
- 4金銭債務の債務者は、不可抗力により期日に…:金銭の支払を目的とする債務では、債務者は不可抗力を抗弁にできないと第419条第3項が定めています。期日に払えなかった原因が不可抗力でも責任は免れないので、記述は正しい内容です。
出典:平成30年度 管理業務主任者試験(一般社団法人マンション管理業協会)問3
この解説に誤りを見つけたら教えてください。直して、直した記録を残します。誤りを報告する(メールが開きます)