第26回 問題56
ソーシャルワークの理論と方法(専門)
次の事例を読んで,問題55から問題57までについて答えなさい。
〔事 例〕
Eさん(19歳,男性)は,高校2年時に自閉スペクトラム症と診断された。3年時に就職活動を行ったが,面接で質問に適切に答えられないことや,ゲームに熱中して寝坊し面接に間に合わないことが何度もあり,不採用が続いた。度重なる不採用の連絡と就職活動の指導によるストレスでうつ状態となり,就職活動を中止したまま卒業した。
1年後,Eさんは主治医から就職活動再開を提案され,通院先のF精神保健福祉士と面談した。F精神保健福祉士は,Eさんには一度見たものを正確に覚える,集中力があるという強みがある一方,高校時代からの課題に加え,自分から相談することは苦手なことが分かった。Eさんは配慮してくれる会社で働くことを希望したため,F精神保健福祉士は精神障害者保健福祉手帳の取得を支援した。そして,V就労移行支援事業所をEさんに紹介し,利用できるよう支援した。(問題55)
V就労移行支援事業所のG精神保健福祉士は,Eさんの訓練の様子を見て,地域のイベントで顔見知りになったW社の社長が頭に浮かんだ。そこで,W社に雇用の可能性について問い合わせたところ,「Eさんに合った仕事があるか分からない」とのことであった。(問題56)
その後,EさんはW社において事務の仕事で職場実習を開始した。実習5日目に,W社の担当者からG精神保健福祉士に,「話があるので来て欲しい」と電話があった。G精神保健福祉士が訪問したところ,担当者は,「Eさんに何度も手順の間違いを指摘したが,同じ失敗を繰り返す」「何かあれば相談するよう伝えていたのに,今日は無断で遅刻した」「このままだと実習継続は厳しい」と話した。一方,Eさんは,「社員から何を注意されたか分からず,とても疲れた。今朝起きたら始業時間を過ぎていたので急いで来たが,実習を始めさせてもらえない」と話した。G精神保健福祉士は,担当者にEさんの対応について助言した。(問題57)
G精神保健福祉士のサポートによりEさんの職場実習は順調に進み,W社はEさんの雇用について前向きに検討し始めた。
次の記述のうち,この時点でG精神保健福祉士がW社に対して行うこととして,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1自分がW社の仕事を見学し,体験できるよう依頼する。
- 2就労移行支援の制度について説明する。
- 3Eさんの特性を詳細に伝え,できそうな仕事を探すよう依頼する。
- 4Eさんを雇用すると助成金の受給が可能となることを説明する。
- 5Eさんと面接し,雇用の可能性を判断してもらうよう提案する。
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✓ これが正解1自分がW社の仕事を見学し,体験できるよう依頼する。
解説
まず支援者が職場の仕事を見学・体験し、合う仕事を見極めます。
この問は(問題56)の段落が中心です。V就労移行支援事業所のG精神保健福祉士が、地域のイベントで知り合ったW社の社長に雇用の可能性を問い合わせたところ、Eさんに合った仕事があるか分からないという返事でした。支援の段階でいえば、職場開拓(雇い入れてくれる職場を見つける働きかけ)の場面です。
決め手は、会社側の返事の中身です。W社は雇うことを拒んだのではなく、合う仕事があるか分からないと迷っています。この迷いにこたえるには、支援者自身が会社の仕事の中身を具体的に知る必要があります。G精神保健福祉士がW社の仕事を見学し、自分で体験させてもらえるよう依頼すれば、作業の手順や求められる正確さ、職場の雰囲気がつかめます。そのうえで、一度見たものを正確に覚え、集中力があるというEさんの強みが生きる仕事を切り出し、会社に提案できます。この時点で最も適切な行動といえます。
他の記述は、会社の迷いにこたえていないか、Eさんの苦手さを踏まえていないものです。制度の説明やお金の話では仕事の中身は分からず、仕事探しを会社に任せたり、面接で判断してもらったりする方法も、この段階では早すぎます。
見分け方として、職場開拓では、支援者がまず職場と仕事を自分の目で知り、本人の強みと結びつけるところから始める、と押さえておくとよいでしょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2就労移行支援の制度について説明する。:W社が迷っているのは、Eさんに合う仕事があるかどうかです。就労移行支援の制度を説明しても、社内の仕事の中身が分からないという疑問にはこたえられません。
- 3Eさんの特性を詳細に伝え,できそうな仕事を探すよう依頼する。:仕事探しを会社に丸ごと任せると、会社の負担が重くなり、迷いも解けにくくなります。また本人の特性を詳しく伝えるには本人の同意が前提で、まず支援者が仕事を知る方が先です。
- 4Eさんを雇用すると助成金の受給が可能となることを説明する。:助成金の説明は会社の費用面の不安には役立ちますが、合う仕事があるか分からないという迷いには直接こたえていません。この時点で優先すべき働きかけとはいえません。
- 5Eさんと面接し,雇用の可能性を判断してもらうよう提案する。:Eさんは高校時代、面接で質問にうまく答えられず不採用が続きました。苦手な面接で雇用の可能性を判断してもらうのは、Eさんの強みを伝えにくい方法です。
出典:第26回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題56。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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