第28回 問題15
現代の精神保健の課題と支援
2歳の男児と1歳の女児を同伴した母親のAさんが夫の飲酒問題を相談するために保健所を訪れ,B精神保健福祉士が相談対応をした。Aさんの訴えは以下のようなものであった。
夫は1年ほど前から深酒を繰り返し,体調不良を理由にしばしば仕事も休むようになった。半年前より,酩酊してはAさんの態度に不満を訴え,大声で罵倒したり,コップや食器を投げたりといった行動を繰り返すようになった。夫が子どもたちの面前でも同様の行動をすることもあってか,男児は夫の姿を見ると怯えた様子を示すことがあり,女児は夜泣きが増えている。夫は反省したのか,この1か月は飲酒をやめていたが,先週の土曜日から再び飲み始め,仕事も休んでいる。病院に行くよう勧めても「俺は病気じゃない」と繰り返すばかりであるとのことだった。
次の記述のうち,この時のB精神保健福祉士の相談対応として,適切なものを1つ選びなさい。
- 1夫と面談しないと支援計画が立てられないので,まずは夫を連れてくるように話した。
- 2夫が困り果てるまで,できるだけ夫と関わらないように助言した。
- 3飲酒行動の自己コントロール障害なので,家にある酒類は見つけ次第廃棄することを勧めた。
- 4夫の苦労に共感して,暴言もできるだけ受容するように助言した。
- 5児童相談所に通告した上で,自宅訪問を提案した。
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✓ これが正解5児童相談所に通告した上で,自宅訪問を提案した。
解説
子どもの面前での暴言等があるため、児童相談所への通告と訪問が適切です。
保健所で家族からの相談を受けた場面で、精神保健福祉士がとるべき対応を問う事例問題です。インテーク(最初の相談)の段階で、まず確かめるべきは安全です。決め手は、夫が酩酊して大声で罵倒したり食器を投げたりし、それを子どもたちの面前でもしていること、男児が夫の姿に怯え、女児の夜泣きが増えているという、子どもの様子です。
児童虐待の防止等に関する法律は、児童が同居する家庭で配偶者に対する暴力が行われることや、児童に著しい心理的外傷を与える言動を、心理的虐待に含めています。また、虐待を受けたと思われる児童を見つけた者には、児童相談所などへ通告する義務があります。この事例では、子どもの安全を守るために児童相談所へ通告し、そのうえで家庭の状況を確かめ、家族全体を支えるために自宅訪問を提案することが適切です。
ほかの肢は、本人を連れてくることを支援の前提にする、問題が深刻になるのを待つ、家族に飲酒の管理や暴言の我慢を負わせる、といった対応で、Aさんや子どもの安全を守る視点が欠けています。
したがって適切なのは、児童相談所に通告した上で自宅訪問を提案する対応です。家族の相談では、まず子どもや相談者の安全を確かめる、と覚えておきましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1夫と面談しないと支援計画が立てられないので,まずは夫を連れてくるように話した。:依存症の本人が受診や相談を拒むことは多く、家族からの相談だけでも支援は始められます。夫を連れてくることを条件にすると、支援が止まり、子どもの安全の確保も遅れてしまいます。
- 2夫が困り果てるまで,できるだけ夫と関わらないように助言した。:本人が困り果てて底をつくまで待つという考え方は、その間に家族や子どもが危険にさらされ続けるおそれがあります。子どもに影響が出ている今は、待つのではなく安全の確保を優先すべき場面です。
- 3飲酒行動の自己コントロール障害なので,家にある酒類は見つけ次第廃棄することを勧めた。:家族が酒を見つけて捨てるなど、本人の飲酒を管理しようとする行動は、本人の反発を招き、暴力の引き金になるおそれもあります。家族が飲酒をコントロールする役を負うことは勧められません。
- 4夫の苦労に共感して,暴言もできるだけ受容するように助言した。:暴言を受け入れて我慢するよう勧めると、Aさんや子どもが被害を受け続けることになります。子どもの面前での暴言は心理的虐待にもあたり、受容を促す助言は適切ではありません。
出典:第28回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題15。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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