第38回 問題79
社会福祉調査の基礎
高齢者の通所型サービス事業を経営するA社会福祉法人では,地域における公益的な取組の内容を検討するため,地域の高齢者に対する無記名の質問紙調査を企画し,高齢者福祉を専門とするB教授の協力を得て,調査を実施することにした。その際,調査結果は,B教授の論文執筆にも用いることで合意した。
次の記述のうち,調査実施における倫理への対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1A社会福祉法人のサービス利用者を調査対象から除外した。
- 2調査結果はA社会福祉法人による地域における公益的な取組の内容検討と,B教授の論文執筆に用いることを依頼文に記載した。
- 3A社会福祉法人からB教授への利益供与とみなされないために,調査費用の負担をB教授に求めた。
- 4調査対象の設定において,B教授がこれまで実施してきた調査の回答者名簿を活用することとした。
- 5B教授は,調査によって得られたデータの中から,自らの仮説に適合する一部のデータを選出して論文を執筆した。
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✓ これが正解2調査結果はA社会福祉法人による地域における公益的な取組の内容検討と,B教授の論文執筆に用いることを依頼文に記載した。
解説
調査結果を論文にも用いることを依頼文に書き、目的を対象者に伝えるのが適切です。
この事例の決め手は、A社会福祉法人が地域の公益的な取組を考えるための調査を、B教授の協力で行い、その結果をB教授の論文執筆にも使うことで合意している、という点です。調査の結果が二つの目的で使われるため、それを対象者にどう伝えるかが、調査実施の倫理の中心になります。
最も適切なのは、調査結果を、A社会福祉法人による地域における公益的な取組の内容検討と、B教授の論文執筆に用いることを依頼文に記載した対応です。社会調査では、調査の対象者に、調査の目的、結果の使われ方、協力するかどうかは自由であること、個人が特定されない形で扱うことなどを説明し、そのうえで協力してもらうことが基本になります。結果を論文として公表することは、対象者が協力を決めるうえで大切な情報です。無記名の質問紙調査では、同意の確認は回答の提出によって行われることが多いため、依頼文にあらかじめ使い道をはっきり書いておくことが特に重要になります。
調査の倫理は、目的と使い道の説明、参加の自由、個人情報の保護、データの正直な扱い、の4つの観点で点検すると、ほかの対応の問題点も見つけやすくなります。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1A社会福祉法人のサービス利用者を調査対象から除外した。:A社会福祉法人のサービス利用者を対象から除く理由は、事例からは見当たりません。地域の高齢者の声を知る調査で特定の人たちを外すと、結果に偏りが出るおそれがあり、倫理への対応にもなっていません。
- 3A社会福祉法人からB教授への利益供与とみなされないために,調査費用の負担をB教授に求めた。:調査費用をB教授に負担させることは、利益供与と疑われないための方法として筋が通っていません。法人と研究者の関係については、費用の付け替えではなく、関係や目的を明らかにして説明することが求められます。
- 4調査対象の設定において,B教授がこれまで実施してきた調査の回答者名簿を活用することとした。:B教授が以前の調査で集めた回答者の名簿を今回の対象選びに使うことは、別の目的で集めた個人情報を、本人の了解なく使うことになります。目的外の利用として倫理上の問題があります。
- 5B教授は,調査によって得られたデータの中から,自らの仮説に適合する一部のデータを選出して論文を執筆した。:自分の仮説に合う一部のデータだけを選んで論文を書くことは、結果を都合よくゆがめる行為で、研究の不正にあたります。得られたデータは、仮説に合わない部分も含めて正直に扱う必要があります。
出典:第38回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題79。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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