第28回 問題39
精神障害リハビリテーション論
2週間前に3度目の入院をしてきたアルコール依存症のAさん(35歳,男性)が,依存症病棟に勤務するB精神保健福祉士に「昨日の依存症プログラムに参加して,今度こそは断酒を頑張ってみようと思っている。今まで仕事のストレスを紛らわすために飲酒を繰り返し,仕事にも支障が出て,何度も会社から注意を受けたがやめられなくて,結局解雇されてしまった。本当に情けない。これまで何度も断酒しようとしては失敗しているから,自分には断酒できないのではないかと不安になる。こんな自分を妻はいつも心配し見守ってくれているが,これ以上妻に心配や迷惑をかけたくない。だから,今度こそは」と話した。そこで後日,B精神保健福祉士は,Aさんの断酒に向けた動機を強化するための面接を行うことにした。
次の記述のうち,面接での対応として,適切なものを1つ選びなさい。
- 1断酒ができた後の配偶者との生活について想像することを促す。
- 2このままだと配偶者からも見放されるかもしれないので,断酒は必要であると助言する。
- 3今までの生活について簡潔にまとめ,一緒に飲酒による失敗経験を可視化する。
- 4退院後の就職活動のために,今からできることを一緒に考えようと提案する。
- 5飲酒をしたくなったら,散歩などで体を動かして気分を変えることを提案する。
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✓ これが正解1断酒ができた後の配偶者との生活について想像することを促す。
解説
断酒できた後の妻との生活を想像するよう促し、変わる動機を引き出します。
断酒への動機を強めるための面接で、どの関わりが適切かを問う事例問題です。決め手は、Aさんが語った、今度こそは断酒を頑張ってみようと思っている、自分には断酒できないのではないかと不安になる、妻にこれ以上心配や迷惑をかけたくない、という言葉です。Aさんには、断酒したい気持ちと、できないのではという不安の両方があり、妻への思いが変わろうとする大きな理由になっています。
本人の中にある変わりたいという気持ちを引き出し、強めていく面接の方法は、動機づけ面接として知られています。動機づけ面接では、援助者が説得したり指示したりするのではなく、本人が自分の言葉で変わる理由や望む将来を語れるよう支えます。断酒できた後に妻とどのような生活を送りたいかを想像するよう促すことは、Aさんが大切にしている妻との関係をもとに、断酒した後の望ましい姿を描くことにつながり、断酒への動機を強めます。
ほかの肢は、脅して断酒を迫る、失敗の経験を並べる、就職活動に話題を移す、飲みたくなったときの対処法を教える関わりで、動機を本人の中から引き出す関わりにはなっていません。
したがって適切なのは、断酒ができた後の配偶者との生活について想像することを促す対応です。動機を強める面接では、本人の言葉で望む未来を語ってもらう、と覚えておきましょう。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 2このままだと配偶者からも見放されるかもしれないので,断酒は必要であると助言する。:配偶者に見放されるかもしれないと伝えて断酒を迫るのは、不安をあおって説得する関わりです。本人の反発や自信の低下を招きやすく、動機を本人の中から引き出す面接の方法とは逆です。
- 3今までの生活について簡潔にまとめ,一緒に飲酒による失敗経験を可視化する。:飲酒による失敗をまとめて目に見える形にすると、すでに自分を情けないと感じているAさんの自信をさらに下げるおそれがあります。断酒できるという見通しを支える関わりになりません。
- 4退院後の就職活動のために,今からできることを一緒に考えようと提案する。:退院後の就職活動について考えるのは、今後の生活の準備としては意味があります。しかし、この面接の目的である断酒への動機の強化からは話題がそれてしまいます。
- 5飲酒をしたくなったら,散歩などで体を動かして気分を変えることを提案する。:飲みたくなったときに散歩などで気分を変える方法は、再飲酒を防ぐための対処の技術です。変わろうとする気持ちを強める動機づけの面接とは目的が異なります。
出典:第28回 精神保健福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題39。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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