第38回 問題11
心理学と心理的支援
事例を読んで,A社会福祉士の対応に関する次の記述のうち,「動機づけ面接」の方法を用いて,クライエントのデイケアへの参加の動機づけを高める対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Bさん(40歳,男性)は,うつ病であったが症状は軽快し,2週間前から復職プログラムを実施する精神科デイケアに通っている。しかし,これまで10日のうち遅刻が8日,欠席が1日であった。デイケアスタッフのAがBさんと面談することとなり,Bさんの話を傾聴すると「毎日,遅刻しないで参加したいが,一方で参加したくない気持ちもあり,アラームで目が覚めてからベッドでぐずぐずしてしまい,遅刻してしまった」と話した。「二つの気持ちの間で揺れているのですね」と応答した後で,Aは,Bさんが目覚めた後に早めに行動することへの動機づけを高める働きかけを試みることにした。
- 1「もう少し早く寝るとよいと思いますよ」
- 2「なぜベッドからなかなか起きることができないのだと思いますか」
- 3「そのことばかりを考えていても仕方がありません」
- 4「このまま遅刻が続くと,復職は難しくなってしまいますよ」
- 5「目が覚めて,すぐに行動することができたら,どんな良いことがあると思いますか」
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✓ これが正解5「目が覚めて,すぐに行動することができたら,どんな良いことがあると思いますか」
解説
行動を変えたときの良いことを本人に語ってもらう問いかけが適切です。
動機づけ面接は、変わりたい気持ちと変わりたくない気持ちの間で揺れる状態(両価性)を受け止め、本人自身の中にある変化への理由や願いを引き出して、行動を変える動機を高める面接法です。支援者が説得や指示をするのではなく、開かれた質問や聞き返しを使って、本人から変化に向かう発言(チェンジトーク)を引き出すことを重視します。
事例では、Aが二つの気持ちの間で揺れていることを言葉にして返した後、目覚めた後に早めに行動することへの動機づけを高めようとしています。この段階で、すぐに行動できたらどんな良いことがあると思うかを尋ねると、Bさん自身が行動を変えることの利点を考え、それを言葉にすることになります。これはチェンジトークを引き出す開かれた質問であり、最も適切です。
これに対し、支援者の側から助言や警告をしたり、話を打ち切ったり、変われない理由を掘り下げたりする対応は、本人の抵抗を強めたり、現状を続ける側の発言を増やしたりしやすくなります。
動機づけ面接では、変わる理由や変わった後の良さを本人の口から語ってもらう問いかけかどうかで見分けます。
ほかの選択肢はなぜ違うのか
- 1「もう少し早く寝るとよいと思いますよ」:早く寝ることをAから提案するのは、解決策を支援者が先に示す助言です。動機づけ面接では、指示や助言よりも、変化の理由をBさん自身に考えて語ってもらうことを優先するので、この場面には合いません。
- 2「なぜベッドからなかなか起きることができないのだと思いますか」:なぜ起きられないかを問うと、Bさんは起きられない理由や言い訳を語ることになり、現状を続ける側の発言が増えやすくなります。行動を変えたい気持ちを引き出す問いかけにはなっていません。
- 3「そのことばかりを考えていても仕方がありません」:そのことばかり考えても仕方がないと返すのは、揺れているBさんの気持ちを打ち切ってしまう対応です。両価性を受け止めて変化への動機を引き出すという面接の進め方に反します。
- 4「このまま遅刻が続くと,復職は難しくなってしまいますよ」:遅刻が続くと復職が難しくなると告げるのは、警告によって変化を迫る対応です。本人の抵抗を強めやすく、Bさん自身の内側から動機を引き出す方法とはいえません。
出典:第38回 社会福祉士国家試験(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)問題11。問題文と選択肢は原文のままです。解説は当サイト独自のもので、同センターとは関係ありません。
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